遥乃陽 novels

ちょっとだけ体験を入れたオリジナルの創作小説

人生は一回ぽっきり…。過ぎ去った時間は戻せない。

越の国戦記 前編 1945年 夏(五式中戦車乙二型/チリオツニの開発)

● 越の国(越乃国/高志国/越洲)とは、大和朝廷に征服支配される以前の古代の統治国家です。 今年は残暑が長引いて、十月初めの暑さが何時までも続き、晩秋の訪れが一向に来ない十一月初頭の早朝の静寂と夢見のまどろみは、突如として始まったドロドロと遠…

桜の予感 (僕 二十才) 第十章 弐

予感がした。 彼女が金沢に来ている気がして、逢(あ)いたいと切(せつ)に思った。 先に僕が彼女を見付けたら追い掛けて、偶然(ぐうぜん)に出逢ったフリができるかも知れない。 彼女の気配(けはい)と出逢いの予感で大気が匂(にお)う。今、僕は相模原(さがみは…

後編 ザ・マムートのフィナーレ(ザ・マムート・ツヴァイの戦い <超重戦車E-100Ⅱ 1945/3/29~5/7>)

1945年 * 5月4日 金曜日 アルテンプラトウ村 駅舎前から街道口へ 800mの距離から撃破した4輌のスターリン戦車が燃え盛(さか)る東方のブラッティン村を、ソ連軍から奪(うば)い返す防衛隊の兵士達の様子を見ながら車長のメルキセデク軍曹は、マム…

前編 ザ・マムートの初陣 (ザ・マムート・ツヴァイの戦い <超重戦車E-100Ⅱ 1945/3/29~5/7>)

内容紹介 雪解けで水嵩が増して流れの速いエルベ川を、戦火を逃れて西岸へ渡ろうと艀乗り場に数万人の避難民と敗残兵が群れる1945年5月7日のフェアヒラント村。 早朝のラジオはドイツの無条件降伏と5月8日午前0時の戦闘放棄を知らせていた。 エルベ…

桜の匂い (私 大学三年生)桜の匂い 第十章 壱

いつか使いたくてウズウズしていたスタンガンを、勢(いきお)いに任(まか)せて思いっ切り電撃させまくった『危(あや)うし乙女(おとめ)の夜』以来、私の苛付(いらつ)いた気分は無くなった。スタンガンは今も催涙(さいるい)スプレーやフォールディングナイフと…

大桟橋とカツ丼 (僕 十八才) 桜の匂い 第八章 壱

今日もバイクでルート246を北上している。三週間前の三月末の日曜日もこの道を走っていた。走行ルートの下見と首都圏のムードを感じたくて相模原市へ行った。彼女がこれから四年間の大学時代を過ごす街と環境を知りたいと思って行ってみた。 ------------…

迷想(迷走)中 (私 大学一年生) 桜の匂い 第八章 弐

信号待ちが有ると彼はその都度、停車する車列の間を抜けて先頭へ出た。悲劇は何度目かの信号待ちで車列の先頭に出ようと、路肩側を進んでいる時に起きた。 ガクンとスピードが急に落ちると、彼は二、三度身を捩って叫んだ。 「降りろっ!」 命令口調の鋭い声…

自分の仕事(僕 十九才) 桜の匂い 第九章 壱

フランス外人部隊のブーツが、四月の陽光に照(て)らされた大桟橋(だいさんばし)の板張りの床を再び踏(ふ)み、重い靴音を鳴らす。先々週の休日も散り始めた満開の桜の花弁(はなびら)が吹雪(ふぶき)のように舞う中を、僕は充(あ)ても無くゆっくりと相模原(さが…

幸せに(僕 十八才) 桜の匂い 第八章 肆

小学校六年生の春の出会いから別れは必然だったのだろうか? これで僕は彼女を諦めるしかないのだろうか? 今のままでは、そうなってしまうだろう。もう手遅れなのか? 時間は戻せなくて相模原の……、たった数時間の出来事が、それまで七年の間、ずっと想い続…

永遠の別れ(私 大学一年生 ) 桜の匂い 第八章 参

(伯父さんに、ジレラ君を送って貰おうかしら) 九月初め、厳しい残暑で融けそうなアスファルトから立ち上る陽炎の中、私はバス停でバスを待っている。熱さで茹だって、だるくて遣る気の無い私は、それでも町田駅のモールまで遊びに行こうとしていた。 今日…

スタンガン(私 大学二年生 ) 桜の匂い 第九章 弐

私はベイブリッジの真ん中に停めた先輩のスポーツカーの中から、観覧車の点滅するカラフルなイルミネーションに見蕩れていた。 (こんな場所に自動車を停めてもいいの? でも、横浜港が綺麗!) 「あれはコスモワールドの観覧車だよ。以前、乗っただろう」 …

立戸の浜(私 高校三年生) 桜の匂い 第七章 八

砂浜の流失侵食を防ぐ離岸堤。この砂浜の広がり具合から離岸堤の効果は十分に有ると思えた。でも、もう十年や十五年で堆積した砂が離岸堤まで砂州を造ってしまいそうな気がする。そうなると道路際は今もでそのようなのに、更に埋め立ての緑地化したみたいに…

彼女の想い(僕 高校三年生) 桜の匂い 第七章 七

「この浜は立戸(たっと)の浜って言うの。以前の浜は、あそこの暗い影みたくて目障(めざわ)りな、消波ブロックの塊(かたまり)が無かったから今よりも明るくて、もっと水は青く透明で砂も白かったみたい。能登島(のとじま)や富山(とやま)湾や立山(たてやま)連…

緩む肩の力(私 高校三年生 ) 桜の匂い 第七章 拾

天高く馬肥ゆる秋晴れの日曜日、例年通り今年も実行された長距離歩行蔡。 (秋は美味しい食べ物だらけで、私は太っちゃったけれど、わざわざ学校がセッテングしてくれる、ダイエットウオーキングは、距離が有り過ぎで、けっこうキツイんだよねー) などと、…

県外就職(僕 高校三年生 ) 桜の匂い 第七章 玖

肌寒い晩秋の日、入社試験を受けに静岡市まで行って来た。時雨れる中、バス停からかなりの距離を歩いて付いた試験会場となるその会社は、中規模ながら静岡市の地場産業を支える業種の中核だ。業界やマニアの間では世界的に有名なブランドでファンも多い。 学…

超常現象(私 高校三年生 ) 桜の匂い 第七章 陸

書中見舞いの葉書は一昨日に書いて昨日の朝に投函した。今、私が居る場所は能登半島内浦の明千寺、私が産まれた石川県鳳珠郡の穴水町諸橋地区に在る町だ。 夏の能登半島の清々しさを彼に知らせて遣りたい。 夏休みになると直ぐに明千寺に来て、休みの期間中…

明千寺(僕 高校三年生 ) 桜の匂い 第七章 伍

「もう、お昼よ。いつまで寝ているの! 早く起きなさい」 お袋がお昼を食べさせようと二階の自室で惰眠を貪る僕を起こす。八月の盆過ぎ、インターハイで負けてから何事にも遣る気がでない。登校日でもない限り朝は起きれないし動かない。毎日、大抵は昼近く…

退院(私 高校三年生 ) 桜の匂い 第七章 肆

(へぇー、ほんとに個人優勝したんだ。彼、けっこうやるじゃん) 朝食のトーストにバターを塗りながら見ている新聞の地域スポーツ欄に、『個人一位、八射八中』と彼の名前が載っていた。私は朝刊から目を離して、昨日からテーブルに置かれている焼きたての食…

可愛い薔薇(僕 高校三年生 ) 桜の匂い 第七章 参

六月初頭の日曜。今日は弓道の試合がある。 全国高等学校総合体育大会、通称インターハイの出場選手を選抜する石川県地区大会だ。この試合で団体、個人の両方に負ければ三年生は部活から引退する。 勝てると、団体優勝校と個人の優勝者と準優勝者が八月のイ…

守護(私 高校三年生 ) 桜の匂い 第七章 弐

朝、いつもの時刻に、家から一番近い停留所が始発のバスに乗る。そして、私はいつもの運転席の反対側に在る降車口前の最前列のシングル席へ座った。 この座席位置は交通事故で特に多く被害を受けて、人命を失う確率も非常に高い。それが分かっていて此処へ座…

バス(僕 高校三年生 ) 桜の匂い 第七章 壱

暫し気絶していたかも知れない……。 (……僕は目を閉じている。閉じた瞼の裏が明るくて紅い……) 目を瞑っている理由が分からないまま、ゆっくり瞼を開けると目の前の座席に合いの制服を着た彼女が座り、びっくりしたような、困ったような、唇を僅かに開いて顰…

拘泥(私 高校二年生) 桜の匂い 第六章 弐

石川県立武道館、今日はここで弓道の試合がある。 【次の日曜は石川県高等学校新人大会です。弓道部の部長になって初めての試合だから、暇(ひま)があっても、無くても一度、弓道の試合を見ようかなって気になったら来て下さい。必ず団体戦と個人戦の決勝まで…

弓と矢 (僕 高校二年生) 桜の匂い 第六章 壱

二学期に入って直(す)ぐに、弓道部の部長に選ばれた。早々に自分専用として今まで使っていた弓道部備品の弓矢と懸(か)けを後輩に譲(ゆず)り渡して、市内の弓道具屋で新しい弓矢と懸けを購入した。道着も新調する。全(すべ)て親父(おやじ)の工場でアルバイト…

金石の海 (私 高校一年生) 桜の匂い 第五章 弐

大きな赤い太陽と金波銀波に煌(きら)めく波が美しい。この感動する綺麗(きれい)な景色を見る為(ため)にバスを乗り継(つ)いで、市内を流れる犀川(さいがわ)が日本海へ注(そそ)ぐ河口に在る金石(かないわ)の町へ遣(や)って来た。古くは砂丘の上に鎮座していた…

金石の浜(僕 高校一年生 ) 桜の匂い 第五章 壱

畝田町(うねだまち)の学校から金石(かないわ)街道を三キロメートルほど走り、金石の浜と防波堤沿いの海岸道路で、腕立て伏せ、腹筋に背筋、ジャンプにダッシュにスクワット、それに基本となる八節(はっせつ)の動作と礼節を叩(たた)き込まれる。そんなトレー…

それぞれの道 (私 中学三年生) 桜の匂い 第四章 肆

地区割りの公立中学校校区でも、多少なりともハイレベルの高校へ生徒をより多く進学させようと、学校側はPTAを絡らめて学力アップに必死だ。学校方針から食み出す生徒がいないように、学校は生徒達への管理指導を先生に徹底させ、先生は学校方針に自分達…

恋と別れ (僕 中学三年生) 桜の匂い 第四章 参

進学相談で担任の先生に、『受けるのはお前の勝手だが、今の成績では危ないぞ。受かってもキリにギリギリだな。本気で受験するのなら、もっと一生懸命に勉強しろ』と、言われてしまった。 笑う顔と確信と希望に満ちた瞳を持つ大人になると目標を決めたからに…

性格ブス (私 中学三年生) 桜の匂い 第四章 弐

ピアノ演奏で得意な曲が十曲ほど有っても全然ダメだ。ただ弾(ひ)きたい曲だけを遊び半分で習っていただけの私は、基礎が全(まった)く解っていなかった。お姉(ねえ)ちゃんの友達に基礎をしっかり教えて貰(もら)ったつもりだったけれど、それは当時、中学一年…

ラブソング (僕 中学三年生) 桜の匂い 第四章 壱

今日は、朝から美術の先生が制作する彫刻像のデッサンモデルをしている。彫刻像は『校訓の像』のタイトルで、どうも我々三年生一同が卒業記念として学校に寄贈するらしい。途切れ途切れに話す先生の言葉を纏(まと)めるとそういう事になった。男女の生徒が寄…

初恋への手紙 The memory of first love

突然、手紙を書くことを許して欲しい。あなたが僕の知っている女性だと信じて書いています。間違っていたのなら、ごめんなさい。 * もう随分と久し振りだね。今、僕は中国広東省深圳市塘厦鎮の寮社屋の部屋で、この手紙を書いています。台湾企業の日本支社…